昭和プロレスの黄金期を彩った数ある名勝負の中でも、正統派の「人間風車」と、最凶の「黒い呪術師」による決戦は、異色でありながらもファンの胸を熱く焦がし続けました。両者が初めて顔を合わせたのは昭和45年2月~3月のカルガリー地区。スタンピード・レスリングを舞台に、この時に両者は13回も対戦し、結果が分かっているのは9試合でブッチャーの8勝1敗という結果が残っています。ノースアメリカンヘビー級やカナディアンヘビー級の王座を巡り、連日のように激しいデッドヒートが繰り広げられました。
同じ年の9月には両者はハワイで対戦し、この時はロビンソンの勝利。さらに2年後の昭和47年5月にはふたたびカルガリー地区で対戦し、引き分けています。その後、5~6年後には舞台を日本に移して3回対戦し、ブッチャーの1勝2分け。その1勝はロビンソンの持つPWF認定ヘビー級王座を奪った勝利でした。
近代プロレスの祖とも言われる英国キャッチ・レスリングの技術を極めたロビンソンと、規格外のラフと怪力でマットを支配するブッチャーの破壊衝動。世界のマットを股にかけ、昭和のリングに刻まれた両雄の濃密な対決の全記録を、ここにつむぎます。
[昭和45(1970)年]
スタンピード・レスリング
昭和45(1970)年2月6日(金曜日)
カナダ/アルバータ州カルガリー/スタンピード・コラール
□スタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級選手権試合(3本勝負)
アブドーラ・ザ・ブッチャー(2-1)ビル・ロビンソン
※第11代王者B・ロビンソンが王座防衛に失敗。A・ザ・ブッチャーが第12代王者になる。ブッチャーはNWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年2月13日(金曜日)
カナダ/アルバータ州カルガリー/ビクトリア・パビリオン
□スタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級選手権試合
アブドーラ・ザ・ブッチャー(勝ち)ビル・ロビンソン
※第12代王者A・ザ・ブッチャーが王座防衛に成功する。ブッチャーの保持するNWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王座は賭けられていない。
昭和45(1970)年2月15日(日曜日)
カナダ/アルバータ州エドモントン/セールズ・パビリオン
□シングルマッチ
アブドーラ・ザ・ブッチャー(結果不明)ビル・ロビンソン
※A・ザ・ブッチャーはスタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級&NWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年2月20日(金曜日)
カナダ/アルバータ州カルガリー/ビクトリア・パビリオン
□スタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級選手権試合(3本勝負)
ビル・ロビンソン(2-1)アブドーラ・ザ・ブッチャー
※第12代王者A・ザ・ブッチャーが王座防衛に失敗。B・ロビンソンが第13代王者になる。ブッチャーの保持するNWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王座は賭けられていない。
昭和45(1970)年2月22日(日曜日)
カナダ/アルバータ州エドモントン/セールズ・パビリオン
□スタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級選手権試合
アブドーラ・ザ・ブッチャー(反則勝ち)ビル・ロビンソン
※第13代王者B・ロビンソンがルールにより王座防衛に成功する。A・ザ・ブッチャーはNWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年2月23日(月曜日)
カナダ/アルバータ州レスブリッジ/レスブリッジ・エキシビション・オーデトリアム
□シングルマッチ
アブドーラ・ザ・ブッチャー(結果不明)ビル・ロビンソン
※B・ロビンソンはスタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級王者で、A・ザ・ブッチャーはNWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年2月25日(水曜日)
カナダ/サスカチュワン州サスカトゥーン/サスカトゥーン・アリーナ
□シングルマッチ(3本勝負)
アブドーラ・ザ・ブッチャー(2-0)ビル・ロビンソン
①ブッチャー(勝ち)ロビンソン
②ブッチャー(反則勝ち)ロビンソン
※B・ロビンソンはスタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級王者で、A・ザ・ブッチャーはNWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年2月27日(金曜日)
カナダ/アルバータ州カルガリー/ビクトリア・パビリオン
□スタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級選手権試合(3本勝負)
アブドーラ・ザ・ブッチャー(2-1)ビル・ロビンソン
※第13代王者B・ロビンソンが王座防衛に失敗。A・ザ・ブッチャーが第14代王者になる。ブッチャーはNWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年3月1日(日曜日)
カナダ/アルバータ州エドモントン/セールズ・パビリオン
□シングルマッチ(3本勝負)
アブドーラ・ザ・ブッチャー(2-1)ビル・ロビンソン
③ブッチャー(レフェリー・ストップ)ロビンソン
※A・ザ・ブッチャーはスタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級&NWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年3月2日(月曜日)
カナダ/アルバータ州レスブリッジ/レスブリッジ・エキシビション・オーデトリアム
□シングルマッチ
アブドーラ・ザ・ブッチャー(結果不明)ビル・ロビンソン
※A・ザ・ブッチャーはスタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級&NWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年3月3日(火曜日)
カナダ/アルバータ州メディシンハット/ザ・ウェスターナー
□シングルマッチ
アブドーラ・ザ・ブッチャー(結果不明)ビル・ロビンソン
※A・ザ・ブッチャーはスタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級&NWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年3月4日(水曜日)
カナダ/サスカチュワン州サスカトゥーン/サスカトゥーン・アリーナ
□シングルマッチ(3本勝負)
アブドーラ・ザ・ブッチャー(2-1)ビル・ロビンソン
※A・ザ・ブッチャーはスタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級&NWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級王者。
昭和45(1970)年3月5日(木曜日)
カナダ/サスカチュワン州レジャイナ/レジャイナ・エキシビション・オーデトリアム
□NWA認定[カルガリー地区]カナディアンヘビー級選手権試合
アブドーラ・ザ・ブッチャー(勝ち)ビル・ロビンソン
※A・ザ・ブッチャーが王座防衛に成功する。ブッチャーの保持するスタンピードレスリング認定ノースアメリカンヘビー級王座は賭けられていない。
ミッド=パシフィック・プロモーションズ
昭和45(1970)年9月30日(水曜日)
米国/ハワイ州ホノルル/ホノルル・インターナショナル・センター・アリーナ
□シングルマッチ(3本勝負)
ビル・ロビンソン(2-1)アブドーラ・ザ・ブッチャー
[昭和47(1972)年]
スタンピード・レスリング
昭和47(1972)年5月19日(金曜日)
カナダ/アルバータ州カルガリー/ビクトリア・パビリオン
□シングルマッチ
アブドーラ・ザ・ブッチャー(両者反則)ビル・ロビンソン
[昭和52(1977)年]
全日本プロレス創立5周年記念世界オープン・タッグ選手権大会(全日本プロレス)
昭和52(1977)年12月4日(日曜日)、大阪府寝屋川市/寝屋川市立市民体育館
□スペシャルシングルマッチ(30分1本勝負)
アブドーラ・ザ・ブッチャー(8分25秒、両者リングアウト)ビル・ロビンソン
[昭和53(1978)年]
ジャイアント・シリーズ(全日本プロレス)
昭和53(1978)年10月18日(水曜日)、栃木県宇都宮市/栃木県体育館
□PWF認定ヘビー級選手権試合(60分3本勝負)、レフェリー:ジョー樋口
アブドーラ・ザ・ブッチャー(2-1)ビル・ロビンソン
①ロビンソン(8分16秒、片エビ固め)ブッチャー
②ブッチャー(6分15秒、リングアウト)ロビンソン
③ブッチャー(3分8秒、レフェリー・ストップ)ロビンソン
※第3代王者B・ロビンソンが2度目の防衛に失敗。A・ザ・ブッチャーが第4代王者となる。ブッチャーはWWC認定プエルトリコヘビー級王者。
’78世界最強タッグ決定リーグ戦(全日本プロレス)
昭和53(1978)年12月3日(日曜日)、佐賀県佐賀市/佐賀スポーツセンター
□スペシャルシングルマッチ/ノンタイトル(30分1本勝負)
アブドーラ・ザ・ブッチャー(4分45秒、両者リングアウト)ビル・ロビンソン
※A・ザ・ブッチャーはPWF認定ヘビー級&WWC認定プエルトリコヘビー級王者。
カナダの極寒の地から常夏のハワイ、そして熱狂の日本へと続いたビル・ロビンソンとアブドーラ・ザ・ブッチャーの抗争史。振り返れば、昭和45年のカルガリーにおける1ヶ月強の間に13戦という超過密スケジュールでの遭遇が、二人の宿命のライバル関係を決定づけたと言えます。
日本での戦いにおいては、昭和53年10月の宇都宮大会でブッチャーがロビンソンをレフェリー・ストップに追い込み、第4代PWF認定ヘビー級王座を奪取した一戦が今なお語り草となっています。ロビンソンの華麗なダブルアーム・スープレックスをも飲み込むブッチャーの凶暴性と底知れぬパワーは、全日本プロレスのリングに強烈なインパクトを残しました。
通算成績で見ればブッチャーが大きく勝ち越しているものの、一戦一戦がプロレスの「静と動」、「光と影」がぶつかり合う至高のドラマでした。プレスタイルの全く異なる二人の天才が織りなした軌跡は、昭和プロレス激闘史の中でも一際異彩を放つ、色あせることのない伝説です。